ブイロク家族 14
 
 
 
第14話
 
 
 
 
クラスでの快彦へのイジメは、どんどん酷くなっていった。
 
掃除では、机を触らせてくれなかった。
給食では、快彦の分をよそってもらえなかった。
快彦が給食当番のときは、クラスの誰もが、快彦のよそったものは食べようとしなかった。
 
 
 
誰も、快彦の味方なんてしてくれなかった。
 
 
 
 
 
 
 
辛くて、怖くて、イタかったが、快彦は泣かなかった。
家でも、イジメられていることは誰にも言っていなかった。
 
 
 
 
 
ある日の朝。
6-1の教室で、先生が言った。
 
「今日の6時間目は、先生は出張なのでいません。だから皆、自習な」
 
皆喜んでいたが、快彦はゾッとした。
 
先生がいなければ、皆静かに勉強なんかしないだろう。特に石井は、皆を従えて、快彦をいじめるに違いない。
 
快彦は小さくため息をついた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そして、6時間目になった……。
 
最初は皆静かに自習していたのだが、突然ガタッと大きな音をたて石井が立ち上がった。
 
「なーなーみんな~」
 
石井が言った。
 
「せっかく先生いない訳だし、みんなでゲームしねぇ?」
 
石井は、不敵な笑みを浮かべた。
 
「指さしゲーム。今から俺が言うことに、一番当て嵌まると思う奴を指さすんだ」
 
 
 
嫌な予感がした。
皆、面白そうに「いいよー」と言う。すると、石井が大声で言った。
 
「このクラスの中で、いっちばん悪い奴だと思う人!!」
 
 
 
 
快彦の不安は的中した。
 
 
 
 
 
 
 
「せーのっ!」
 
 
 
 
 
 
バッと。皆の指が、一斉に快彦に向けられた。快彦はゾッとして俯いた。
すると、石井が本当に面白そうに笑った。
 
「わぁー! やっぱり快彦かぁ! そりゃあ集金盗んじゃった奴だもんなぁ! 悪いに決まってるかぁ!」
 
クラス皆で快彦を嘲笑った。快彦は歯を食いしばって堪えた。
 
「ほ~ら~。快彦も黙ってないでさ、一緒に遊ばない?」
 
石井と、石井のグループの男子たちがツカツカと快彦に歩み寄ってきた。
 
快彦が顔を上げた途端、石井がガッと快彦の襟を掴んだ。
 
 
 
 
「遊ぼうぜ、快彦」
 
 
 
 
 
ドン!
 
 
石井は快彦を教室の後ろに押し倒した。
快彦は突然のことで受け身がとれず、床に倒れた。
 
「いってぇ…」
 
快彦が小さく呻くと。
 
ガッ
 
石井が、快彦の脛を蹴った。
とても痛く、強く。
 
 
「いっ……」
 
「ハハハ…」
 
ガッ
 
ガッ
 
ガッ
 
石井は楽しそうに、何度も快彦の脛を蹴った。
 
「おもしれー顔するなーお前…ハハハハハ…!」
 
「いっ…痛いっ…」
 
やめて、と快彦が言っても、石井は楽しそうに何度も何度も快彦の脛を蹴った。
 
 
 
 
 
 
 
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