第13話
「お前は最後っ!」
その日の給食で。
皆、給食当番から、パンやスープ、牛乳をトレーにのせてもらうために並んでいた。
快彦が並んでいると、スープをよそっていた当番が快彦に言った。
「お前は最後に自分でやれ」
周りのクラスメイトも。うんうんと頷いている。
「でもっ......」
「テメェは自分でやれってつってんだよっ! それにお前の菌が付くだろ! だからお前は最後!!」
快彦が言い返そうとすると、当番は遮るように怒鳴った。
「ほらっ、さっさとどけっ」
後ろの人にも押され、快彦はなにもできずに席に戻り、全員が終わってから自分で給食をよそった。
帰りのあいさつをすると、先生が快彦を呼んで、言った。
「今日の事、家に電話で話していいか?」
集金の事だ。快彦はぶんぶん首を横に振って、勢い良く頭を下げた。
「それはっ! やめて下さい、お願いしますっ! 家族にだけはっ......!」
もともとやったのは自分ではない。そんなことを、昌行や博に言われるなんて、絶対に嫌だった。
「お願いしますっ。うちには兄弟しかいないんです。それに兄たちはお店やってて忙しくって......。お願いします!!」
快彦は、何度も何度も頭を下げた。快彦の必死な姿に、流石に先生もしかる事が出来ず、言った。
「じゃあ、電話しないでおくよ。でも反省しろよ」
すると、快彦は顔を上げて、少し安心したような顔をすると、
「ありがとうございます!」
と言って教室を走って出て行った。
「ただいまっ!」
家に帰ると、剛、健、准一がドタドタと走ってきた。
「快くんおかえりぃ〜〜〜」
「「快兄ーーー!」」
今日は色々あって気分が暗かった快彦も、弟たちの笑顔をみると明るくなれた。
「快くん、あそぼっ」
「快兄、早く早くっ!」
遊ぼう、と自分に言ってくれる弟たち。
...学校でもこうやっていられたらいいのに......
快彦は少し悲しくなりながらも、弟たちの前では精一杯笑っていた。