ブイロク家族 11
 
 
第11話
 
 
 
 
 
「ちょっと触んないでよっ!!」
 
 
 
 
 
掃除の時間。快彦が机を運んでいるときだった。快彦が運ぼうとしたのは、女子の机。
快彦が触った途端、その机の女子が快彦に怒鳴った。
 
 
 
「あー! もうっ!! 菌付いちゃったじゃん!」
 
 
 
快彦は立ち尽くした。その子は机を運び、汚れをとるように手で机をはらった。
 
 
「きったな〜い! 手洗ってこよーっと」
 
その子は走って教室を出て行った。
 
 
 
 
 
 
快彦は動けなかった。
イジメは石井のグループだけでなく、クラス全体にまで広がってしまったのだ。
 
 
 
 
 
 
「っ......どけよ」
 
他の男子が快彦を肘で押した。
 
「ぁっ......」
 
男子は快彦を睨み、快彦から離れていった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「快くん」
 
 
 
その日の放課後。快彦が家に帰っていると、後ろから聞き慣れた声がした。振り向くと、まだ小さい身体をした准一だった。
 
「いっしょに、かえろぉ♪」
 
准一はにっこり笑って快彦の手を握った。
准一は歩きながら、嬉しそうに話した。
 
「きょうねぇ、こうへいくんとあそんだんだぁ♪ こうえんのすなばでね、おーーっきいトンネルつくったんだよぉ! おててがね、ぜーんぶ入っちゃうくらいおっきいのつくったんだぁ♪」
 
 
快彦は、なぜか泣きたい気持ちになった。楽しそうに友達と遊んだことを話す准一が、羨ましかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
......まつ、おか。
 
 
 
 
 
自分で「一緒にいるな」と言ったくせに、すごく寂しくなった。一緒にいてほしかった。
 
 
「大丈夫」じゃなかった。一人で耐えるのは、すごく辛かった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「......快くん?」
 
 
 
 
 
 
 
......一緒にいたいよ、松岡......
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「快くん、手、いたいよぉ」
 
 
 
いつのまにか、准一と繋いでいる手に力を込めてしまっていた。
 
「あっ...ごめんね、准。痛くしちゃって、ごめんね」
 
快彦は准一の背丈に合わせてしゃがみ、准一の手をなでながら何度も謝った。
すると准一は、快彦にぎゅうっと抱きついて。
 
「大丈夫だよぉ♪ もう、いたくないよぉ」
 
准一は快くん、快くん、と優しく抱きついていた。
 
「ごめんね」
 
 
 
快彦は、もう一度、准一に言った。准一の小さな身体は、とても温かかった。
 
 
 
 
 
 
 
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