第10話
それからも、石井達、クラスの者からの快彦への嫌がらせ、無視は続いた。
上履きを濡らされ、砂を入れられ、筆箱を隠され、放課後会えばバカにされ......。
皆、それを楽しんでいた。先生に怒られている快彦を見て、嘲笑っていた。
しかし、松岡だけは、いつも快彦の傍にいた。授業が終わると、すぐに快彦の方へ寄っていき、快彦を一人にさせまいとした。
しかし、そんなある日のことだった。
「あちゃー」
朝、快彦と松岡は一緒に登校した。松岡が靴箱で上履きを取り出すと、中には大量の砂が入っていた。
「何だこれぇ〜。きったねぇ〜」
松岡はうわーと言いながら砂をはらい、上履きを履いた。松岡は何も言わなかったが、快彦は不安になった。
石井たちがやったとしか思えなかったから......。
その日の休み時間だった。
「ヨ〜〜〜〜シ〜〜〜〜」
松岡が縋るように快彦に抱きついてきた。
「なんだよ」
松岡が快彦に抱きついてくるのはしょっちゅうのことだったので、快彦は気にせず松岡の話を聞いた。
「ヤベーよ〜; 社会のノートがない〜〜! 持ってきたのに! どーしよー;;」
快彦は真っ青になった。快彦は松岡の腕をしっかりつかんで、
「ちょっと来て」
と教室をでた。
誰もいない階段で。
快彦は黙って俯いていた。松岡は駄々をこねるようにに言った。
「なんだよ〜。お前がつれてきたんだろ〜? なんか話せよお」
すると、快彦は顔を上げ、悲しそうな顔をして言った。
「松岡...。もう、俺と一緒にいない方がいいよ......」
松岡の顔に「?」が浮かんだ。
「俺と一緒にいたら、松岡も嫌がらせされるよ。だから、もう...。一緒にいちゃダメだよ」
すると松岡はキレた。
「なんでだよっ?! 友達だろっ? 一緒にいて何が悪いんだよっ!」
「お願いだから......! 俺から離れて、皆と同じように過ごして! 俺のこと、気にしなくていいからっ!!」
快彦の声は必死だった。
「松岡にまで、嫌な思いさせたくないし...」
「俺は大丈夫だから」と快彦は笑ってみせた。すごく、痛々しい笑顔だった。
松岡は、不本意だったが、快彦の強い目に勝てなかった。
「...わかったよ」
松岡は、1人で教室に戻っていった。
「これで......いいんだ」
快彦は小さく呟いた。