そして、今日。
あの時屋上でした、
「10年後、また来よう」
という約束を、果たしに。
俺たちは10年振りの再会を果たした。
「井ノ原くんが言った約束なのにね」
気まずいのかな、と健が寂しそうに言って。
少し重い空気になると、剛が笑って言った。
「そんなしんみりすんなって! 海行こうぜ! 海!」
「…そうだな」
俺たちも頷いて、おばちゃんに「また後で食事でも」と告げて、海に向かった。
「海も全然来てなかったなぁ…」
長野が懐かしそうに微笑むと、健が突然立ち止まった。
「え、健どうした?」
俺たちが戸惑って聞くと。
バッと前方を指を指し、言った。
「あれ、井ノ原くん…」
驚いて、振り返れば。
コンクリートの防波堤に。
立ち尽くし遠くを見つめている、
井ノ原がいた。
皆目を見張って。
「あっ…あれっ…井ノ原くんだ!!」
剛が叫び走り出した。
俺たちも走り出して。
井ノ原だ、井ノ原なんだ…!!
防波堤の手前で、止まり。
「井ノ原!」
笑って、呼べば。
防波堤の先にいた、その人は。
ゆっくりと、振り向いた。
「井ノ原…」
前に立っていたのは、紛れもなく井ノ原で。
俺たちは迷わず、駆け寄った。
目の前で止まると、井ノ原は。
「みんな…」
来てたんだ、と俯いて。
目に涙を溜めて、
顔を上げて、笑った。
俺たちは顔を見合わせて、頷いて。
ギュウッと、井ノ原を抱きしめた。
「覚えててくれたんだ」
井ノ原がそんなこと言うから、俺たちはベシッと頭を叩いてやった。
「バーカ。忘れる訳ねぇだろ」
10年前。
6人で交わした、遠い約束。
一番嬉しくて、一番悲しかった、あの日。
「これからだって、忘れないよ」
永遠に。
そう言って、笑って。
俺たちは海辺を、走り出した。
End.