幸せのお呼出し
 
幸せのお呼出し     警視庁捜査一課9係
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
いくつもの事件を抱える9係も、見事なチームワークで着々と解決していき、その日は久々のオフとなった。
 
浅輪は普段のスーツ姿とは打って変わったラフな服装で、朝から小走りに向かっていた。
係長の娘、そしてお付き合いらしきものをさせて頂いている、倫子の店に。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「倫子ちゃーんっ!」
 
今日も賑わう倫子の店に入り、浅輪はまっすぐ倫子を見つけ、犬のように走り寄る。
倫子は少し顔をしかめたが、すぐに笑顔になり「事件解決お疲れ様」と言った。
浅輪はいつも以上に目を輝かせて言う。
 
「倫子ちゃん、今日何の日か知ってる?」
ほらっ! あの日だよ! 大切な日!
 
浅輪ははしゃぎながら倫子に聞くが、倫子は面倒臭そうな顔をして冷たく言った。
 
「今日?…何かあったっけ?」
 
知らないわよ、と返す倫子に、浅輪は耳の垂れた犬のようにしょぼんとし、悲しそうな顔をした。
 
「えぇ~倫子ちゃん、ホントに知らないの?…うー、まぁいいや…。じゃ、ケーキ頂こっかな~…」
 
スイーツの並べられたショーケースを覗き、浅輪がケーキを選び始めると、倫子が呆れたように言った。
 
「もーあんまりケーキ食べ過ぎたらダメでしょ、今日はやめとけば」
 
 
 
浅輪は「え、」と驚いたように顔を上げる。
 
「倫子ちゃん、今日機嫌悪い?…もしかしてオレ、何かした?!」
 
悲しそうな目で訴える浅輪を見て、倫子は嫌そうに目を逸らした。
 
「べつに機嫌悪くないわよっ、…ほら、今日は忙しいから!」
 
 
 
 
帰れば、という倫子の言葉に、浅輪は本当に悲しそうな顔をした。
そんなぁ~、と泣き出しそうにしながらも、浅輪は店を出た。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
今日は倫子ちゃんと過ごしたかったのに…
 
浅輪はすっかり元気をなくし、トボトボと自宅に向かい歩きだした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
午後5時過ぎ。
 
プルル、プルルルル…
 
自宅で一人寂しく過ごしていた浅輪の携帯に、『係長』の文字が光った。
 
 
「…はい、浅輪です」
 
また事件か、とがっくりしながらも、浅輪は電話に出た。
 
「浅輪くん。9係に来て」
 
「え、現場じゃないんですか」
 
「いいから、9係に」
 
 
 
 
いつもは現場直行なのに9係集合と聞いて、少々驚いた浅輪だったが、言われるまま9係に向かった。
またいつものように、灰色のスーツを身に纏って。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…あれ? 皆さーん…?」
 
 
9係と書かれた自動ドアを抜けた浅輪だが、部屋には誰もいなかった。
それぞれの机も、皆が座る大きめの机も綺麗に整理されている。
誰も来ていないような様子を見て、「もしかして現場集合なのかな」とも思った浅輪。
しかし現場がどこなのかも教えてもらっていなかったことに気づき、途方に暮れて立ち尽くすしかなかった。
 
 
連絡しようと思い、ズボンのポケットから携帯を取り出すと。
 
 
 
 
 
「…!?あれッ?!」
 
突然視界が真っ黒に染まった。
 
 
停電かと焦り始めた、その時。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
パンッ パンパンパンッ!!
 
 
「ハッピーバースデー! あっさわーー!!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
クラッカーの爆発音と共に、チカチカと電気が灯り。
 
驚き後ろを振り向くと、お馴染みの9係メンバーが浅輪にクラッカーを向けていた。
 
「えっ! 皆さん、どうしたんすか…?! 事件かと…」
 
「なーに言ってんの! 係長、事件あったなんて一言も言ってないわよ!」
 
戸惑う浅輪に、志保は呆れたように言った。
 
「今日お前ッ誕生日だろ?そんなスーツキメちゃって、律儀だなー!」
「浅輪は青柳さんと違うんですよ」
「主任、黙って頂けます」
「まーまー二人とも!浅輪君の誕生日までやり合うのはやめましょう!」
 
 
また始まろうとした青柳と村瀬の言い合いと、それに割って入る矢沢を見て、浅輪は普段の感覚に戻り笑った。
すると係長が言う。
 
「浅輪君おめでとう。…もう一つ、忘れちゃいけないもの、ね」
 
意味ありげに目を合わせた6人に、浅輪は首を傾げた。
すると6人は半分に分かれ、真ん中に通り道を作った。
 
 
 
 
 
「誕生日、おめでとう~!」
 
「…!!!」
 
 
そう、6人の間から現れたのは、先程浅輪を店を追い出した、倫子だった。
手には手作りのケーキを持っている。
 
 
 
「浅輪っ!お前は幸せもんだなっ!」
 
ベシベシッと青柳に強く叩かれ恥ずかしがった浅輪ではあったが、倫子にはしっかりスマイルを見せた。
 
ケーキを見ると、チョコレートを基調としたホール型になっている。
中心には「浅輪直樹」とホワイトチョコに書かれており、手作り感を強調させた。
 
 
 
「忘れるわけないでしょ」
 
朝、店では惚けて見せた倫子。
してやったりな笑みを浮かべて浅輪を見た。
 
「あ、だから今日はケーキ買わせてくれなかったんだ…」
 
 
店でケーキさえも食べさせてくれなかったのは、今、ケーキを持ってきたからなのだ。
 
「一日に二個も三個も食べたら動けなくなるからね」
と言う倫子に、心配してくれたんだと良いように考える浅輪であった。
 
 
 
 
 
 
 
「ほらっ二人で仲良くするのも良いけど、係長もお鍋作ってくれたんだから食べるわよっ!」
 
 
志保の声をきっかけに、9係はパーティーモードに切り替わった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「そーいやお前いくつになったんだ?」
 
青柳が聞くと、箸を止めて浅輪は答えた。
 
「あ、35です」
 
「あれーもう35!?…そろそろ相手貰わないとなっ」
 
 
 
青柳の言葉に、ニヤリと笑った9係メンバーと意味ありげに見つめてきた係長に、浅輪は焦り言った。
 
「ちょちょっ!やめてくださいよ、かか、からかわないでくださいっ!」
 
顔を真っ赤に染める浅輪と、それを優しく見つめる倫子に、9係には温かい笑い声が響いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Happy Birthday!!! Yoshihiko Inohara!
 
35th years old.
 
 
 

イノッチお誕生日おめでとう! 9係小説にしてみました♪
 
イノッチの笑顔がなによりも大好きです。これからもその笑顔を私たちに見せてください!
 
あさイチも頑張ってね♪ よし、これでトニセン、全員アラフォーだ!笑
 
 
さらなるご活躍に期待します。
 
 
 
 
2011.5.17
 
 
 
 
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